
食後 血糖値のシミュレーション
見つかりにくい糖尿病に注意、糖尿病という名前のせいか、多くの人は尿に糖が出るか出ないかを気にしています。
しかし、空腹時血糖値が140mg/dl以上のすべての患者さんの尿から糖が出るわけではありません。
170mg/dlを超えなければ、患者さんは尿には糖が出ないのです。
それでもれっきとした糖尿病であることに変わりありません。
もちろん、尿は数時間前から腸脱にたまっていたものですし、血糖値は最大瞬間風速のようなものですから簡単に断定することはできませんが、尿に糖が出ていないから大丈夫と安心することはできません。
巧妙な落とし穴にはまることになりかねませんから、注意が必要です。
また、空腹時の血糖値は正常でも、食後にはねあがってしまう糖尿病があります。
これも発見されにくいので注意しなければなりません。
空腹時の血糖値が110mg/dlという正常範囲の人でも、食後1 時間くらいたつと血糖値はグンと上がります。
しかしそれも、150、160mg/dl止まりです。
たとえフルコースのフランス料理を食べたあとでも、200mg/dlを超えることはありません。
食後の血糖値が200mg/dlを超えたとき、それを食べ過ぎや飲み過ぎのせいにすることはできないのです。
空腹時の血糖値が正常でも、食後の血糖値が200mg/dlを超えれば立派に糖尿病です。
また食後に血糖値がはねあがるタイプは発見されにくいと言いましたが、ブドウ糖負荷テストを行なえばわかります。
300キロカロリー分の甘い炭酸水を飲んで、血糖値の変化を観察します。
炭酸水を飲んでから2時間後に血糖値が200mg/dl以上であれば、糖尿病と診断されます。
自覚症状がなく、あったとしても気づきにくい糖尿病ですが、さらに検診でも見逃されてしまうタイプの糖尿病もあることを覚えておいてください。
ごく近い将来、日本の糖尿病の診断基準が変わるかもしれません。
現在日本では、空腹時の血糖値が140mg/dl以上か、食後(あるいはブドウ糖負荷後2時間) の血糖値が200mg/dl以上のどちらかであれば、糖尿病と診断されます。
糖尿病の検査では、もう一つ「ヘモグロビンエーワンシー」という数値も調べられます。
これは血糖値の1ヵ月の平均値です。
血糖値というのは、株価と同じように、常に変動しています。
たまたま検査した日、その時聞の血糖値が正常でも、翌日には異常値になっているかもしれません。
そこで1ヵ月間で変動した血糖値の平均値を調べ、どのような状態かをみるわけです。
ただし、このヘモグロビンは、単独で糖尿病検査の診断基準としては使われていません。
その理由は、施設や検査の方法の違いによって、検査値の差があるのです。
ある所で計ったデータと私どものクリニックで計ったデータを比べると、同じ方法で測定されたにもかかわらず0.5 パーセントくらいの誤差が出てしまいます。
血糖値の誤差が0.5mg/dlならOKなのですが、ヘモグロビンの0.5 パーセントというのはかなり大きいのです。
これでは、診断基準としてはこころもとありません。
ですから、日本では血糖値の基準にしたがって糖尿病が診断されます。
したがって、空腹時の血糖値が120-139mg/dlの人、食後の血糖値が170-199mg/dlの人、ブドウ糖負荷テストの2時間後の血糖値が170-199mg/dlの人は、糖尿病とは診断されるわけではありません。
しかし、手放しでは喜ぶことができません。
「糖尿病ではない」と診断されたとしても「本当にだいじようぶかな」と不安になる人も多いでしょう。
このような人たちは、将来は3割が糖尿病になると言われる「境界型」と診断されます。
いま「糖尿病である」 とは断定できませんが、糖尿病になっていく過程にあるのかもしれません。
あるいは、まったく糖尿病にはならないのかもしれません。
それは「神のみぞ知る」です。
だからと言って、運を天に任せろというわけではありません。
このような境界型にあると診断された場合には、半年後、1年後と、きめ細かく経過を見て、早期治療に役立てられることになります。
さて、これまでの日本の診断基準をまとめると、@空腹時の血糖値が140以上、A食後いちばん高くなる血糖値が200以上、Bブドウ糖負荷テスト2時間後の血糖値が200 以上という三つの場合に「あなたは糖尿病ですしと診断され、治療がスタートされるわけです。
では、米国の糖尿病診断基準はどうなっているのでしょうか。
米国では1997年から、空腹時の血糖値が126以上であれば、糖尿病と判断されるようになりました。
これは日本では糖尿病とは診断されず、まだ本格的な治療は開始されません。
米国とは大きな違いです。
米国で126以上を糖尿病として治療を開始させるのは、日本で言う境界型の人が高率で糖尿病に移行していくためです。
これを早期治療によって未然に防ぎ、糖尿病全体の予後を良くしようというねらいがあります。
この米国の空腹時血糖の診断基準が、まもなく日本でも採用されそうな気配です。
いままでの検診で140以下だから安心だと思っていた人も、次の検診では糖尿病と診断されてしまうかもしれません。
また多くの糖尿病患者がふえることになるでしょう。
米国の糖尿病診断基準の改訂は、さまざまな波紋を呼びそうです。
それは、単に糖尿病の診断基準がきびしくなったということだけではなく、で「まったく問題ない」とされてきた多くの人に対しても、あなたは糖尿病予備軍です。
十分に注意してください」と警鐘が鳴らされるようになるからです。
「これから糖尿病になっていくかもしれません」という診断が今までなかったわけではありません。
ブドウ糖負荷試験(ブドウ糖を含んだ水を飲んで血糖値の変化をみる検査) の2時間後の値が140-199mg/dlのとき、日本では「境界型」と呼ばれます。
この境界型は、空腹時血糖値では診断されませんでした。
ところが、米国の今回の改訂は、新たに空腹時血糖値における糖尿病予備軍の範囲を決めています。
空腹時血糖値110-125mg/dlの範囲を、新しくIFG と定め、これが糖尿病の一歩手前としたのです。
これまでは、健康診断の結果が血糖値115mg/dlくらいなら、尿にも糖は出ませんし、なんら注意されることもなく「糖尿病ではありません」と診断されていました。
しかし、これからは、「あなたはIFG です。
要注意となるわけです」。
糖尿病という病気は、健康な状態から、知らないうちに少しずつ雪だるまのように悪化していくことが多く、それに拍車をかけるのが、高血糖です、この悪循環をできるだけ早く断ち切り、本当の糖尿病患者を減らすためにも、今回の米国の基準改訂は大きな意味があるといえるでしょう。
米国では、なぜ糖尿病の診断基準が改定されたのでしょうか。
境界型の3割が本当の糖尿病になっていく現実から、糖尿病発症を予防しようという目的のほかに、もう一つ重要な理由があります。
それを説明するために、私どもの『 T メディカルクリニック』で検査を受けた刊代前半の女性のデータを紹介しましょう。
この人は、それまで糖尿病の診断を受けていませんでした。
まず、食前の空腹時血糖は122mg/dlでした。
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